Vi et animo

出会いから繋がるもの

 新しい訓練生として彼女を見た時、過去の記憶を思い出した。一年ほど前、リムサロミンサで柄の悪い冒険者に絡まれているヴィエラ族の女性を助けたことを。その人は森から出て、船に乗ってエオルゼアにようやく辿り着いたばかりで、右も左も分からなかった。ひとまず冒険者ギルドに連れて行って、マスターに事情を話して適切なジョブのギルドに所属するまで見守った。確か彼女が入ったのは双剣士ギルドで……ああ、だから、俺のところに。
 彼女は覚えていないかもしれないけれど、再び会えたことを嬉しく思った。
 長身の彼女が繰り出す剣技は鋭く美しく、相手の攻撃を回避する動きもしなやかでまるで踊りのようだった。故郷の森で、舞踏を嗜んでいたのだろうか。思えば、俺は彼女の名前しか知らない。どんな幼少期を過ごし、なぜエオルゼアにやってきて、これからどうしたいと考えているのか。何が好きで、何が嫌いで、何を美しいと思うのか。会えて嬉しいと思うほど心に留めていたのに、知らぬことばかりだ。それを悔しいと思い、聞かなければと決めた。

 覚えているかい? そう尋ねると、彼女は蕾を開いた花のように可憐な笑顔で頷いた。
「あの時助けてくださった方ですよね? 不慣れな私を手助けしてくださってありがとうございます」
 ぺこりと頭を下げた時、耳がぴこぴこと揺れる。長身故に美しいという表現が似合う彼女のイメージとギャップがあり、可愛らしかった。
「いや、エオルゼアに生き、冒険者のたまごを育てる者として当たり前のことをしただけさ。君は双剣士になったんだね」
「はい、守ることや癒すことよりも、攻め込むことの方が性にあっていると思って」
 きちんと自分のことを見ることが出来ていると思った。きっと、腕の立つ冒険者になるのだろう。そうしたら、俺のことも……
「そうか……なあ、良かったら、君のことを色々聞かせてくれないかい? 知りたいんだ」
 まるで告白のような言葉だと思った。彼女は耳をぴくっと動かして、驚いた顔をする。からかっているのではない、という意味で真っ直ぐに見つめると、その頬は赤く染った。
「わ、私のことで良ければ……」
 少し嬉しそうに微笑んで頷く。笑顔の温かさに、心が熱を持った。
 この再会は君の長い旅路にとって些細なことかもしれない。でも俺は、君のことが……  なんだ。